築年数が古く、旧耐震、下水道未接続、残置物が多い、災害リスクや周辺環境にも弱点がある住宅では、「今は住めるのだから持ち続けるべきか」「安くても売れるうちに手放すべきか」で迷いやすくなります。特に地方の古い戸建てでは、建物そのものの価値より土地価格、解体費、片付け費、流通のしやすさが売却判断を左右します。
重要なのは、購入価格や現在住めるかどうかだけで判断しないことです。例えば14年前に400万円で買った住宅でも、その400万円を基準に現在の売却価格を考えることはできません。反対に、不動産会社から5万円という話が出たからといって、それが唯一の市場価格とも限りません。
売る・住み続けるの二択をすぐ決めるより、「現状有姿で仲介に出した場合の手取り」「処分してから売った場合の手取り」「今後5年間所有した場合の必要資金」を同じ表にして比較すると、感情と数字を分離して判断しやすくなります。
- 5万円の買付と150万円の仲介査定は矛盾するとは限らない
- 低価格の不動産では仲介手数料が売却額に対して大きくなりやすい
- 隣の土地が200万円だから自宅も200万円とは限らない
- 旧耐震だから売れないわけではないが買い手は限定されやすい
- 「解体しないと売れない」は必ずしも正しくない
- 残置物50万円を払ってから売るべきかは売却確度で判断する
- 「今住める」は残す理由になるが将来の修繕余力も考える
- 固定資産税2万5000円だけなら保有コストは低いが税金だけで判断しない
- 近所付き合いのストレスは家の価値とは別に考えてよい
- 迷っているなら「3か月だけ一般仲介」を試す方法がある
- 専任媒介と一般媒介の条件も確認する
- 住み続ける案と売却する案を5年間の数字で比較する
- すぐに売らず一時的に実家へ移って考える方法もある
- 手放すべき大きな理由を無理に作る必要はない
- まとめ:5万円で即決する前に現状有姿で市場価格を確認する
5万円の買付と150万円の仲介査定は矛盾するとは限らない
古い戸建てでは、買取価格と仲介で想定される売出価格に大きな差が出ることがあります。買取業者は購入後の残置物処分、修繕、再販売、保有期間、売れ残りなどのリスクを自社で負うため、その分だけ買取価格を低くする必要があります。
一方、仲介では不動産会社自身が家を買うわけではなく、市場から購入希望者を探します。そのため「買取では扱えないが、100万円台で買う個人が見つかる可能性はある」という状況は十分にあり得ます。
例えば、現状のまま5万円で買う人がいるケースと、残置物を撤去して150万円で売るケースでは、売却価格だけを比較してはいけません。片付け費、仲介手数料、登記関連費用、境界や測量の必要性などを引いた最終的な手取り額を比較する必要があります。
低価格の不動産では仲介手数料が売却額に対して大きくなりやすい
価格が低い不動産を仲介で売る場合は、仲介手数料について事前確認が特に重要です。国土交通省によると、2024年7月1日以降、物件価格800万円以下の「低廉な空家等」については、売主または買主の一方から受け取れる仲介手数料の上限について特例が設けられており、一定の場合は税込33万円までとなります。なお、この特例では使用中か空き家かを問わないとされています。国土交通省・不動産取引の仲介手数料[参照]
そのため「5万円で売れるなら5万円もらえる」と考えると実際の収支とずれる場合があります。媒介契約を結ぶ前に、仲介手数料がいくらになるのか、売主負担の費用に何が含まれるのかを書面で総額確認することが大切です。
150万円で売れる想定についても同様で、残置物撤去50万円、仲介関連費用、その他の売却費用を引いた結果70万円程度になるのであれば、「150万円で売る案」ではなく「約70万円の手取りになる可能性がある案」として5万円案と比較したほうが現実的です。
隣の土地が200万円だから自宅も200万円とは限らない
近隣の30坪の更地が200万円で売りに出されていることは参考材料になりますが、売出価格と成約価格は別物です。1年間売れ残っているのであれば、少なくとも「200万円ならすぐ買い手が付く」という証拠にはなりません。
さらに土地価格は、面積だけでは決まりません。接道条件、道路幅、土地形状、高低差、上下水道、土砂災害などのハザード、墓地など周辺環境、建築可能な建物、境界の確定状況などによって買い手の評価は変わります。
したがって、近隣物件は参考にしつつも、不動産会社には「150万円で売れると思いますか」ではなく、過去の近隣成約事例、想定売出価格、想定成約価格、成約までの期間を分けて提示してもらうのがおすすめです。査定額そのものより、その根拠を比較することが重要です。
旧耐震だから売れないわけではないが買い手は限定されやすい
築49年程度の住宅では、建築時期によって旧耐震基準の建物に該当する可能性があります。旧耐震だから法律上売却できないということではありませんが、購入者が耐震性や住宅ローン、将来の修繕を気にするため、比較的新しい住宅より買い手が限定されやすくなります。
国土交通省でも、1982年1月1日以前に建築された既存住宅について、一部の制度では現行耐震基準を満たす証明書などが必要になる場合があると案内しています。国土交通省・既存住宅を取得したとき[参照]
また、中古住宅には建築士による検査と保証を組み合わせた既存住宅売買瑕疵保険という制度がありますが、加入には一定の検査基準があります。古い住宅だから当然利用できるわけではありません。国土交通省・既存住宅売買瑕疵保険[参照]
「解体しないと売れない」は必ずしも正しくない
古家の場合、「更地にしないと売れない」と言われることがありますが、これは物件ごとの話です。古家付き土地として現状のまま売り、購入者側で解体する取引もあります。また、DIYや低価格住宅を求める人が建物をそのまま利用するケースもあります。
特に土地価格が200万円前後と想定される地域で解体費が200万円かかるのであれば、売主が先に解体することが経済的に有利とは限りません。200万円かけて更地にしても、それ以上売却価格が上がる保証はないためです。
解体契約をする前に、「現状有姿」「残置物撤去のみ」「解体して更地」の3条件でそれぞれ仲介査定を取り、手取り額を比較するのがおすすめです。解体は後戻りできないため、売却方法が固まる前に先行させる必要はありません。
残置物50万円を払ってから売るべきかは売却確度で判断する
大量の残置物がある家では、片付ければ買い手が増える可能性があります。しかし「50万円払って片付ければ150万円で必ず売れる」という保証がなければ、先に大きな費用を投入することにはリスクがあります。
例えば現状有姿100万円、残置物撤去後150万円という査定なら、50万円を使って売値が50万円上がるだけなので、費用対効果はほとんどありません。逆に、現状では買い手がほぼ付かないものの、撤去後なら複数の購入候補が見込めるのであれば意味があります。
片付ける場合も家全体を一度に依頼する以外に、貴重品・必要品だけ先に分別し、残りを業者へ依頼する方法があります。複数社から見積もりを取り、処分量、作業人数、車両費、家電リサイクル対象品などを含む総額で比較すると安心です。
「今住める」は残す理由になるが将来の修繕余力も考える
現在大きな不具合がなく生活できていることは、家を持ち続ける明確なメリットです。住居費を低く抑えながら一戸建ての広さを使えるのであれば、低価格で手放してから賃貸住宅へ移るより経済的な場合があります。
一方、築49年で長期間大規模修繕をしていない住宅では、「今故障していない」ことと「今後も大きな費用が発生しない」ことは同じではありません。屋根、外壁、給排水、給湯器、電気設備、床下などは突然修理が必要になる可能性があります。
月5万円を無理なく貯蓄できるのであれば、1年間で60万円、3年間で180万円です。家を残す場合は「修繕が起きないことを期待する」のではなく、住宅維持用の資金を別口座で積み立てると、将来への不安を小さくできます。
固定資産税2万5000円だけなら保有コストは低いが税金だけで判断しない
年間固定資産税が2万5000円であれば、税金だけを見ると所有コストはそれほど大きくありません。そのため「固定資産税が高いから急いで売らなければならない」という状況とは異なります。
ただし本当の保有コストには、固定資産税以外にも草木の管理、火災保険、設備修理、害虫・害獣対策、残置物処分、将来の解体や売却手続きなどが含まれます。さらに所有者本人が感じる心理的負担もあります。
金額にできる費用だけではなく、「この家を所有していることを考える時間が毎月どれくらいあるか」「5年後も同じ問題で悩み続けたいか」という視点も判断材料になります。
近所付き合いのストレスは家の価値とは別に考えてよい
住宅自体に大きな欠陥がなくても、その場所で生活を続けることに強い負担を感じるなら、それは住み替えを検討する理由になります。不動産を手放すために、雨漏りや倒壊などの「誰が見ても納得する重大な理由」が必ず必要なわけではありません。
家には市場価値だけでなく利用価値があります。一戸建てで自由に暮らせる、趣味のスペースが取れるという価値がある一方、その土地での生活が負担になるのであれば、そのプラスとマイナスを比較する必要があります。
一方で、売却してしまった家を後から取り戻すことは難しいため、「近所付き合いがつらいから今すぐ売る」と一気に決める必要もありません。売却活動を始めることと、安い買付を即決することは別です。
迷っているなら「3か月だけ一般仲介」を試す方法がある
5万円で買いたいという話が半年ほど前のもので、現在も結論が出ていない場合は、同じ二択を考え続けるより市場へ一度出して反応を見る方法があります。
例えば「古家付き・現状有姿・残置物あり」を前提に、100万円~150万円程度など根拠のある価格で一定期間仲介販売し、問い合わせや内覧があるか確認します。ただし適切な開始価格は地域と物件条件によるため、複数の仲介会社の意見を聞いて決めます。
3か月程度販売して問い合わせがほぼゼロなら、その結果自体が市場価格を判断する材料になります。反対に内覧や値下げ交渉が複数入れば、5万円より高く処分できる可能性が具体的になります。机上査定を何度比較するより、実際の市場反応のほうが有力な情報になることがあります。
専任媒介と一般媒介の条件も確認する
仲介を依頼するときは、媒介契約の種類や期間、レインズへの登録、広告方法、仲介手数料、残置物を残したまま販売可能かなどを確認します。特に低価格物件では、不動産会社によって販売への積極性が大きく異なる場合があります。
「自社の知り合いが5万円で買う」という提案と、「一般市場に公開して100万円以上で買う人を探す」という提案では性質が違います。前者が不当に安いと断定はできませんが、市場に出す前に決める必要もありません。
国土交通省も、仲介手数料については媒介契約を結ぶ際に上限の範囲内であらかじめ合意することが重要としています。国土交通省・仲介手数料の考え方[参照]
住み続ける案と売却する案を5年間の数字で比較する
決められないときは、今の家をあと5年持つ場合と今売る場合を数字にすると判断しやすくなります。例えば固定資産税が年2万5000円なら5年間で12万5000円ですが、それに保険、草木管理、修繕予備費などを加えます。
売却案では「150万円で売れる」といった表面上の金額ではなく、残置物撤去、仲介手数料、その他売却費用、引っ越し費用を引いた後の金額を使います。実家に戻る場合も、生活費や将来再び住居を確保するときの費用まで考慮します。
| 比較項目 | 所有を続ける | 売却する |
|---|---|---|
| 現在の住居 | 確保できる | 失う |
| 固定資産税 | 継続 | 売却後は原則不要 |
| 大規模修繕リスク | 負担する | 売却後は原則なくなる |
| 一戸建ての自由度 | 維持できる | なくなる可能性 |
| 地域生活の負担 | 続く | 離れられる |
| 残置物問題 | 残る | 売却条件により解消 |
| 将来の処分問題 | 先送りになる | 現在解決できる |
この比較で重要なのは、「得か損か」だけでなく、どちらの問題を自分が引き受けたいかです。家を残せば将来の修繕と処分を引き受け、売れば住居としての自由度を手放すことになります。
すぐに売らず一時的に実家へ移って考える方法もある
生活上可能であれば、一度実家へ移り、家をすぐ売らず短期間だけ離れてみる方法もあります。実際に離れて生活することで、「やはり一戸建てに戻りたい」のか、「家を所有していないような生活のほうが気持ちが軽い」のかを体験できます。
ただし家を空ける場合は、防犯、換気、漏水、郵便物、庭木などの管理が必要です。長期間放置すれば建物の状態が悪化する可能性もあるため、期限を決めずに何年も保留する方法はおすすめできません。
例えば「実家へ移る→3か月間仲介に出す→希望価格で売れれば売却→売れなければ価格を見直すか住み続ける」と事前にルールを決めておけば、半年・1年と悩み続ける状態を避けやすくなります。
手放すべき大きな理由を無理に作る必要はない
古い家を手放す判断では、「屋根が崩れそう」「税金が高すぎる」といった決定的な理由を探したくなります。しかし不動産は、壊れてからでなければ売ってはいけないものではありません。
現在住めるという利点も本物ですし、将来の修繕、残置物、売却難易度、生活上のストレスという欠点も本物です。一方だけを否定する必要はありません。
重要なのは「今すぐ5万円で売るか、一生住むか」という極端な二択にしないことです。現状有姿で一般市場へ出し、実際に100万円前後で買う人がいるのかを確かめてから判断できます。売出価格で買い手が付かなければ、その時点で初めて5万円程度の買付や有償処分を比較しても遅くありません。
まとめ:5万円で即決する前に現状有姿で市場価格を確認する
築49年、旧耐震、残置物あり、下水道未接続など条件が厳しい家でも、「解体しなければ絶対に売れない」「5万円でしか売れない」と現時点で決めつける必要はありません。買取を複数社に断られていても、仲介で購入者を探す市場とは条件が異なります。
一方、現在住めるからという理由だけで所有し続けることにも、将来の修繕、片付け、庭管理、売却、解体などの課題があります。年間2万5000円の固定資産税だけを見るのではなく、今後5年間の維持費と生活上の負担まで含めて考える必要があります。
現実的な進め方は、解体や50万円規模の片付けを先に行わず、まず「残置物あり・古家付き・現状有姿」で複数の仲介会社から販売条件を取り、一定期間市場に出して反応を見ることです。5万円の買付より高い購入希望者が現れれば選択肢が増え、現れなければ5万円という価格にも市場上の意味が出てきます。
家を残す場合も売る場合も正解は一つではありません。決定的な欠陥が発生するまで待つ必要はなく、反対に迷っている状態で極端に安い条件へ急ぐ必要もありません。「今売った場合の手取り」「5年間持った場合の費用」「その5年間そこで暮らしたいか」の3点を基準にすると、後悔の少ない判断へ近づけます。


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