成長期には「よく寝ると身長が伸びる」と聞くことがあります。そのため、夜の睡眠だけでなく昼寝をすれば、さらに身長が伸びるのではないかと考える人もいるでしょう。
睡眠は子どもや思春期の健やかな成長に欠かせませんが、昼寝をしたこと自体によって身長が直接伸びる、あるいは昼寝の時間を増やすほど最終身長が高くなる、と単純に考えることはできません。身長には遺伝的要因をはじめ、栄養状態、健康状態、ホルモン、睡眠、運動など多くの要因が関係します。
ここでは、昼寝と身長の関係、睡眠中に分泌される成長ホルモン、成長期に意識したい睡眠時間や食生活について分かりやすく解説します。
昼寝をすれば身長が伸びるとは限らない
昼寝には眠気や疲労を軽減する役割がありますが、「毎日昼寝を○時間すれば身長が○cm伸びる」という医学的な公式があるわけではありません。身長の伸びは一つの生活習慣だけで決まるものではないためです。
一方、睡眠そのものは成長期に重要です。睡眠中には成長に関係するホルモンが分泌されますし、十分な睡眠は心身の健康を保つうえでも欠かせません。そのため、夜に必要な睡眠を十分確保したうえで、必要に応じて昼寝を取り入れるという考え方が現実的です。
例えば夜更かしをして睡眠時間が5時間しかなく、その不足分を昼寝だけで補おうとするよりも、まず夜の就寝時刻を見直し、年齢に応じた睡眠時間を確保することが大切です。
睡眠と成長ホルモンにはどのような関係がある?
身長が伸びる過程には成長ホルモンが関係しています。成長ホルモンは脳の下垂体から分泌され、骨や筋肉を含む体の成長や代謝に重要な役割を持っています。
成長ホルモンの分泌には日内変動があり、睡眠とも密接な関係があります。特に睡眠開始後の深いノンレム睡眠に関連して大きな分泌がみられることが知られています。そのため、昔からいわれる「午後10時から午前2時に寝ないと成長ホルモンが出ない」というように、特定の時刻だけで考えるのは適切ではありません。
また、「成長ホルモンが睡眠中に出るのだから、たくさん昼寝すればその分だけ背が高くなる」ともいえません。成長ホルモンの分泌と最終的な身長は単純な比例関係ではなく、遺伝や栄養、甲状腺・性ホルモンを含むさまざまな要因が関係しています。
身長を伸ばしたいなら昼寝より夜の睡眠を大切にする
成長期の生活では、昼寝の回数を増やすことより、毎日の睡眠リズムを整えることを優先しましょう。夜更かしを続けて休日だけ長時間眠るより、なるべく一定の時間に就寝・起床する生活のほうが睡眠習慣を整えやすくなります。
必要な睡眠時間は年齢によって異なります。個人差もありますが、成長期の子どもや10代は成人より長い睡眠時間を必要とします。朝起きるのが非常につらい、日中に強い眠気がある、休日になると極端に長く寝てしまう場合には、普段の睡眠が不足していないか振り返ってみましょう。
例えば学校のため朝7時に起きる必要があるのに、毎日午前1~2時までスマートフォンを見ている場合、昼寝を追加することだけを考えるのではなく、夜のスマートフォン利用を早めに切り上げて就寝時刻を前倒しすることが対策になります。
長すぎる昼寝には注意が必要
昼寝そのものが悪いわけではありません。眠気が強い日に短時間休むことで頭がすっきりし、午後の活動に集中しやすくなる人もいます。
ただし、夕方以降まで長時間眠ってしまうと、夜になっても眠くならず、就寝時刻が遅れることがあります。その結果、「夜更かしする→翌日眠い→夕方まで昼寝する→また夜眠れない」というサイクルになる可能性があります。
昼寝をした日のほうが夜の寝付きが明らかに悪くなる場合には、昼寝の時間帯や長さを見直してみましょう。成長を意識する場合でも、昼寝によって夜間の十分な睡眠が妨げられるようでは本末転倒です。
身長の成長には食事と運動も重要
骨が成長するためには材料となる栄養も必要です。特定の食品やサプリメントを摂取すれば急激に背が伸びるわけではありませんが、成長期にはエネルギーやたんぱく質、カルシウム、ビタミンDをはじめ、さまざまな栄養素を不足させないことが大切です。
「牛乳だけ大量に飲めば背が高くなる」「特定のサプリを飲めば身長が伸びる」といった情報には注意しましょう。一つの食品に偏るより、主食・主菜・副菜などを組み合わせ、年齢や活動量に見合った食事を取ることが基本になります。
適度な運動も骨や筋肉の健康、体力づくりに役立ちます。ただし、バスケットボールや縄跳びなど特定の運動をすれば、その刺激だけで遺伝的な範囲を超えて身長が伸びるという意味ではありません。睡眠・食事・運動をセットで考えることが重要です。
身長は遺伝だけで決まるわけではないが影響は大きい
身長には遺伝的要因が大きく関係しています。そのため、同じ睡眠時間、同じような食生活をしている同年代でも、身長や成長する時期にはかなりの個人差があります。
特に思春期では、急激に身長が伸びる時期が人によって異なります。周囲の友人が先に成長していても、自分の成長が遅めに始まる場合があります。現在の身長だけを同級生と比較して過度に焦る必要はありません。
また、成長期が終わって骨端線が閉鎖した後では、睡眠時間や昼寝を増やすことによって骨そのものを長くして身長を伸ばすことは期待できません。年齢や成長段階を考慮することも必要です。
身長の伸びが気になるときは成長記録を確認する
身長について医学的に重要なのは、ある時点の数字だけではなく、一定期間にどの程度伸びているかという「成長の経過」です。学校の健康診断や母子健康手帳など過去の記録があれば、身長の推移を確認してみましょう。
身長が低めでも一定のペースで成長しているケースがある一方、以前は順調だったのに成長速度が大きく低下する場合もあります。成長曲線を利用すると、年齢に応じた身長の推移を確認しやすくなります。
身長が長期間ほとんど伸びない、成長曲線から大きく外れていく、思春期の発達が極端に早い・遅いなど気になる変化がある場合には、小児科や小児内分泌を扱う医療機関に相談してください。成長ホルモンや甲状腺ホルモンの異常、慢性疾患、栄養上の問題など、医学的な評価が必要になることがあります。
まとめ:昼寝だけでなく睡眠・栄養・運動を総合的に考えよう
昼寝をしたからといって、それだけで身長が伸びるとはいえません。ただし、睡眠は成長期の健康に重要であり、成長ホルモンの分泌とも関係しています。眠気があるときに適度な昼寝をすることは構いませんが、夜の睡眠を犠牲にしないことがポイントです。
身長を伸ばすための「裏技」を探すより、十分な夜間睡眠、バランスの取れた食事、適度な運動、規則的な生活を続け、体が本来持っている成長を妨げない環境を整えることが大切です。
身長には大きな個人差があります。成長の遅れが心配な場合には昼寝を増やして様子を見るのではなく、過去の身長を成長曲線で確認し、必要に応じて小児科などの専門家へ相談するとよいでしょう。


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