歩行時の大殿筋下部線維の役割については、理学療法士の松田氏が述べているように、ローディングレスポンスからミッドスタンスにかけて外部関節モーメントの制動に大殿筋上部が関与し、その後に大殿筋下部の力で前方への推進力が生じるとされています。これに対し、一般的には歩行中の前方推進力は下腿三頭筋が担っていると考えられています。筋電図のデータをもとに、これらの見解を比較・考察します。
大殿筋下部線維の筋電図的特徴
大殿筋下部線維は、踵接地直前から活動を開始し、足底接地前に筋活動のピークを迎えます。筋繊維の方向が縦であるため、効率よく股関節伸展運動に関与します。立脚初期では、身体の前方移動とともに股関節屈曲による体幹前傾が生じないように制動し、股関節を伸展するために大殿筋下部線維の働きが重要とされています。
筋電図データの解析と考察
筋電図のデータを解析すると、大殿筋下部線維の活動は確かに立脚初期において顕著であり、股関節の制動と伸展に寄与していることが示されています。しかし、筋活動のピークが小さいことから、純粋な股関節伸展運動にはあまり関与していない可能性が考えられます。
下腿三頭筋との比較
下腿三頭筋は、歩行時における前方推進力の主要な源とされています。筋電図データを比較すると、下腿三頭筋の活動は大殿筋下部線維に比べて高いレベルで持続的に観察され、前方への推進力に大きく貢献していることがわかります。
臨床的な示唆と応用
これらの知見から、歩行時の前方推進力を高めるためには、大殿筋下部線維だけでなく、下腿三頭筋の強化も重要であると考えられます。リハビリテーションやトレーニングプログラムにおいては、これらの筋群をバランスよく鍛えることが推奨されます。
まとめ
大殿筋下部線維は歩行時における股関節の制動と伸展に関与していますが、前方推進力の主要な源は下腿三頭筋であると筋電図データから示唆されます。歩行機能の改善を目指す際には、両筋群のバランスを考慮したアプローチが有効です。
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